系統
ブルーベリーとは一般的に北アメリカに自生している野生種とその改良品種を指しています。品種は200種以上にも及びますが、大きく以下の4つの系統に分類されます。
- ラビットアイ系:Rabbiteye Blueberry(Vaccinium ashei)
暖地でも育て易く、土質への適応幅も広い。1種類のみでは実が成らず2種類以上を植えることが必要。 - ハイブッシュ系:Highbush Blueberry(Vaccinium corymbosum)
土質を選び、夏の高温・乾燥に弱い。1種類のみでもそれなりに実を付ける。果実の品質は良好。 - ハイブリッド系:hybrid Blueberry
系統間の交配を行い、野性系の良い点を併せ持つ。 - ローブッシュ系:Lowbush Blueberry(Vaccinium angustifolium)
改良は殆どされていない系統。野性の自生株の利用が主。
ブルーベリーの野生種は、ラビットアイ系、ハイブッシュ系、ローブッシュ系の3つの系統で、ラビットアイ系は温暖な地域に自生し、ハイブッシュ系は北方、ローブッシュ系はさらに寒い地域に自生しているようです。
栽培品種はこれらの野生種の中から優良な形質を持つものを選抜したもの、および、それらの交配により作出されたものです。以下の図に野生種と栽培品種の系統の関係を示します。
"Southern Highbush Blueberry"および"Half-High Blueberry"については、Highbush Blueberryの中のサブタイプとするケースが多いですが、ここでは野生種の系統をまたいで交配されていることから、"Hybrid Blueberry"と一次分類することにしました。
なお、日本で売られている苗は、系統の表示があってもハイブッシュかラビットアイかの大まかな2つのくくりとなっているか、あるいは、系統の表示が無いかの状況です。別項の「品種一覧」に各品種がどの系統であるかを示していますので、品種名がハッキリしているものであれば、確認してみてください。
:Rabbiteye Blueberry
- 耐寒性はハイブッシュ系より劣り、栽培適地はミカンが栽培できる地域が良好と言われています。Sevenの住む岐阜は、ミカンが栽培できる地域なのでそれ以外で育たないかどうかは良く判りません。
- ラビットアイ系が好む土壌は、ブルーベリー全体に言えるとおり、酸性のフカフカ土壌ですが、ハイブッシュ系に比較して許容幅が広い傾向にあるようです。土壌改良(ピートモスの鋤き込みなど)をしない土壌でも、ラビットアイ系品種では良い成長を示すものもあります。
- 樹高は3mほどにもなるようです。Sevenの家の庭のホームベルはまだ1.6mほどしかなく、どこまで大きくなるのか不明ですが、ハイブッシュ系に比較して樹は大きくなる傾向があるようです。
-
ラビットアイ系は、自家不結実性が強く1品種では殆ど実がなりません。開花後、小さな青い実がついても、1品種のみでは熟す前に実が自然落果するか、実が大きくなりません。ラビットアイ系の他品種と混植して受粉させることで、実成りが良くなり、熟す時期も早まるようです。
なお、ラビットアイ系でも品種によっては、1本でも問題なく実をつけるものもあるようです。 "Centurion"という品種は1本でも実成りが良いことが海外の文献にあります。また、Sevenの経験ではホームベルも単独でそれなりに実をつけます。
- ラビットアイ系の春の芽吹き/開花は一般的にハイブッシュ系よりも早い傾向があります。ラビットアイ系の芽吹き/開花はサクラの花の開花と同時かやや遅れる程度です。しかし、収穫時期についてはハイブッシュ系よりも遅い傾向にあります。
- 枝の色は、ハイブッシュ系がレンガ色、緑がかった黄色の品種が多いのに対して、ラビットアイ系では殆どの品種が緑色です。木質化する過程でも緑色のまま、いきなり木質化していきます。
-
花はハイブッシュ系に比較して小果柄(*)が長く、垂れ下がって咲く傾向にあります。また、ラビットアイ系の品種では、小苞葉(*)に赤みがかかり、がく(*)についてもピンク色を帯びる傾向が見られます。写真の右側がハイブッシュ系で、左側がラビットアイ系の花です。
*) これら用語が花のどの部位を指すかは「ブルーベリーの詳細解剖」の中の「Morphology / 形態学」のページを参照ください。
-
葉の特徴は、ハイブッシュ系が葉の縁全域にわたって逆Rのカーブを示さないのに対して、ラビットアイ系の葉の縁の線は葉の先端近くで逆Rを示すものが多いです。逆Rを示す葉が多く認められ、かつ、次項の葉の色具合がラビットアイ系であれば、その株はラビットアイ系またはサザンハイブッシュ(ラビットアイ系とハイブッシュ系の交配種)と判断して間違いないと思います。
典型的な葉の形状は右の写真のとおりで、左側がラビットアイ系の葉。右側がハイブッシュ系の葉です。
-
上の項に続きますが、もう一つの葉の特徴として葉の色があります。ハイブッシュ系が普通のグリーンをしているのに対して、ラビットアイ系はブルーがかったやや白っぽい葉 〜 ちょうどブルーベリーの果実につくブルームが葉についている感じ 〜 をしている傾向にあります。この傾向は、新葉が展開する時期、特に顕著に見られます。
右の写真の上がラビットアイ系の新葉、下がハイブッシュ系の新葉です。また、上の葉の形状の項の写真でも、違いが見られると思います。
- 紅葉は、ハイブッシュ系に比較すると鑑賞性に劣ります。ラビットアイ系の品種は、落葉が遅いか、または、春の新芽の時期まで葉が残る傾向があり、紅葉が樹全体一律に進み、深い色合いを見せるものは少ない気がします。
- ラビットアイ系の品種の落葉が遅い、または、落葉しないのは、ラビットアイ系がもともと南方系の品種であり、冬に落葉〜休眠して寒さを凌ぐ必要性が無いためではないかと考察します。
- ラビットアイ系で一般的に売られている品種は、ホームベル、ティフブルー、ウッダードの3種です。この品種はブルーベリーを置いている園芸店なら必ずといってあります。
- なお、上記に示した樹の特徴はあくまで全体的傾向であり、品種によってはハイブッシュ系により近い特性を示すものもありますので、その点留意ください。
:Highbush Blueberry
- Highbush Blueberryの中を"Northern Highbush blueberry"と"Southern Highbush Blueberry"という2つのタイプに分けているケースが多く見られますが(このホームページも当初はその分類)、"Southern Highbush Blueberry"は、ハイブッシュ系にラビットアイ系または暖地系の近縁種を交配したものであるため、ここでは純粋にハイブッシュ系である"Northern Highbush blueberry"を"Highbush Blueberry"としています。
- 耐寒性はラビットアイ系よりも強く、栽培適地はリンゴが栽培できる地域が良好と言われています。これについても、Sevenの住む岐阜は、リンゴとミカンが栽培できる地域の中間に位置しますので、ここより南で育たないかどうかは良く判りません。
- ハイブッシュ系が好む土壌は、ブルーベリー全体に言えるとおり、酸性のフカフカ土壌ですが、ラビットアイ系に比較して許容幅が狭い傾向にあるようです。土壌改良(ピートモスの鋤き込みなど)を怠った場合、ラビットアイ系品種が良い成長を示していても、ハイブッシュ系品種ではうまく成長しないこともあります。
- 樹高はラビットアイ系よりは低く1.5mほどのようです。Sevenの家のハイブッシュ系品種はまだ小さくて、どこまで成長するのか判りません。
-
ハイブッシュ系は、ラビットアイ系と異なり、基本的には1品種のみでも実を着けます。Sevenの育てているランコーカス、ブルークロップ、ウェイマウスなどは花をつけた分きっちり結実しています。この点で、もし初めてブルーベリーを育てられるのであればハイブッシュ系がお薦めと思います。
なお、ハイブッシュ系についても、ハイブッシュ系の他品種と混植した方が、実の数が多くなる、実が大きくなる、熟す時期が早くなる、などの良い効果が出ることもあるようです。
- ハイブッシュ系の春の芽吹/開花は一般的にラビットアイ系よりも遅い傾向にあります。しかし、収穫時期はラビットアイ系よりも早い傾向があります。
- 果実はラビットアイ系に比較すると、より大きく、品質(香り、味)が良い傾向にあるようです。まぁ、全体的な傾向であり、品種によっては逆転している場合もありますが・・・。
- 枝の色は、ラビットアイ系の殆どが緑色であるのに対して、ハイブッシュ系ではレンガ色、緑がかった黄色の品種が多いです。ハイブッシュ系でも新鞘は緑色をしていますが、木質化する前にレンガ色、または、緑がかった黄色に枝の色が変わってきます。
-
花はラビットアイ系に比較して小果柄(*)が短く、房状に固まって咲く傾向にあります。また、ハイブッシュ系の品種では、小苞葉(*)は緑のものが多く、がく(*)も青緑色のものが多いです。写真の右側がハイブッシュ系で、左側がラビットアイ系の花です。
*) これら用語が花のどの部位を指すかは「ブルーベリーの詳細解剖」の中の「Morphology / 形態学」のページを参照ください。
-
葉の特徴は、ラビットアイ系の特徴に書いたのと一緒。ハイブッシュ系が葉の縁全域にわたって逆Rのカーブを示さないのに対して、ラビットアイ系の葉の縁の線は葉の先端近くで逆Rを示すものが多いです。ハイブッシュ系の株でも葉の状態が悪いなどで逆Rを示している葉が観察できることがありますが、逆Rを示す葉が大半を占めることはないです。
典型的な葉の形状は右の写真のとおりで、左側がラビットアイ系の葉。右側がハイブッシュ系の葉です。
-
上の項に続きますが、もう一つの葉の特徴として葉の色があります。ハイブッシュ系が普通のグリーンをしているのに対して、ラビットアイ系はブルーがかったやや白っぽい葉をしている傾向にあります。この傾向は、新葉が展開する時期、特に顕著に見られます。
右の写真の上がラビットアイ系の新葉、下がハイブッシュ系の新葉です。また、上の葉の形状の項の写真でも、違いが見られると思います。
- 紅葉は美しく鑑賞性に富む品種が多いです。品種毎に紅葉の色合いは、レンガ色、深い紫、鮮烈な赤、など異なりますが、総じてハイブッシュ系品種の紅葉は樹全体一律に訪れ、ラビットアイ系品種に比較して綺麗です。落葉も、年内に落葉する品種が多いです。
- ハイブッシュ系の品種がキッチリと紅葉し、落葉するのは、ハイブッシュ系がもともと北方系の品種であり、冬の寒さに適応する必要性があるためではないかと考察します。
- なお、上記に示した樹の特徴はあくまで全体的傾向であり、品種によってはラビットアイ系により近い特性を示すものもありますので、その点留意ください。
:Hybrid Blueberry
- ブルーベリーの野生種の系統(ラビットアイ、ハイブッシュ、ローブッシュ)をまたいで、品種交配されて作り出されたものがハイブリッド系です。
- 特徴は文字どおり親となった2系統の特徴が交じり合うようです。例えば、ラビットアイ系の育てやすさ・暖地への適応性と、ハイブッシュ系の果実の品質の良さが混在しているとか。
- ハイブリッド系の中では、ハイブッシュ系とラビットアイ系、または、ハイブッシュ系と暖地のブルーベリーの仲間、の交配種を"Southern Highbush Blueberry"、ハイブッシュ系とローブッシュ系の交配種を"Half-High Blueberry"と呼ぶことが多いです。
- "Southern Highbush Blueberry"は、低温要求量の少ない"Highbush Blueberry"を目指して開発されたもので、"Northern Highbush Blueberry"より温暖な地方でも育てやすいようです。
- "Southern Highbush Blueberry"の収穫時期はハイブッシュ系よりもさらに早いものが多いようです。ブルーベリーの全ての系統の中で、最も早い時期に収穫できるのは"Southern Highbush Blueberry"の系統と思います。
- "Southern Highbush Blueberry"の主な品種は、フローダブルー、オニール、シャープブルー、リベイル、などがありますが、一般的には殆ど売られているのを見かけません。本場の米国での開発年が遅かったせいか、まだ日本では一般的に普及していないようです。
-
"Southern Highbush Blueberry"は、ラビットアイ系と交配されたためか、自家不結実性が強く1品種では実がならないものもあるようです。
- "Half-High Blueberry"は、家庭栽培での鑑賞性を求めたり、また、多雪地での栽培性を良くすることを目指して、"Highbush Blueberry"と"Lowbush Blueberry"の交配により樹高を低く押さえたもののようです。
- "Half-High Blueberry"の主な品種は、ノースランド、トップハット、などがありますが、これもあまり売られているのを見かけません。
- Sevenが初めてブルーベリーを買った時、たまたまそれがハイブリッド系でした。しかし、このブルーベリーは、その時まだ育て方が良く分かってなかったために、1年ほどで枯れてしまいました。
:Lowbush Blueberry
- ハイブッシュ系よりもさらに寒冷な地域に自生するブルーベリーです。
- 実物を見たことが無いのですが、海外のWebページで見ると、樹高は大人のひざまでも無いようです。
- ローブッシュ系ブルーベリーは産業的な栽培が難しい為か、改良品種は非常に少なく、数品種が存在する程度のようです。それ以外は、全て野性種がそのまま食用に用いられているようです。
- カナダなどでは野性のローブッシュ系ブルーベリーの大規模な自生地で実を採取し、それを食品加工するのが一般的のようです。
- 不慮の事故で亡くなられてしまった写真家の星野さんのアラスカの写真では、一面にローブッシュ・ブルーベリーが自生している様子が写ってます。