ブルーベリーいろいろ追求!! No.007
〜 ブルーベリーを元気に育てる用土は?(その2)〜 共生菌に着目して 〜
- 12/27/06 記
最近、植物の共生菌(菌根菌)についていろいろと調べています。
すると、調べれば調べるほどに、今までの観察を裏付けることが出てきて、もしかしたら共生菌に着目した用土作りが、ブルーベリーを元気に育てる用土への最も近道なのではないかとの思いを強くしています。
こちらは、ピートモス単用の用土に挿し木して、発根した苗木(挿し木後移動なしの7.5cmポット苗)の細根の写真です。
こちらでは菌根菌の付着は確認できず、綺麗なそのままのブルーベリーの根です。
これら2つの写真を比較して見ただけでも、菌根菌の付着した根は、菌糸の枝分かれが多く、養分吸収能力に優れているように思えます。
実際、植物の根だけでは、遊離したN、P、Kなどの無機栄養素のみしか吸収できない(との説が多い)のですが、菌根菌の付着した根では、@ 菌根菌が出す酵素でチップなどの有機物を分解、A菌体に無機栄養素として取り込み、B菌体内の無機栄養素がブルーベリーの根に移動・吸収、という具合に有機物からの栄養吸収が行われる(こちらも、との説が多い)ようです。また、水分吸収についても、菌根菌を通じた水分移動が行われるようで、根単独よりもより広い範囲から水分を集めることができるようです。
このように、菌根菌がブルーベリーの根に着いて菌根を作ることは、ブルーベリーの生理代謝を大きく改善すると考えられます。よって、「ブルーベリーを元気に育てる用土」を考えるには、菌根菌を定着させ、働かせることを加味することが大変重要と思えます。
今までの追求で、気相の多い用土でブルーベリーが良く育つこと、また、「針葉樹の樹皮・小枝チップ」のみでも良く育つこと、が見えてきていました。今回、その用土で菌根を見つけましたが、その結果からすると、もしかしたら物理組成が元気な生育を促したのではなく、菌根菌が作用したためのようにも考えられると思います。
今後は、菌根菌を意識して「ブルーベリーを元気に育てる用土」の追求をしてみたいと思います。
現時点では、次のようなことを考慮することが必要かと考えています。- 土壌中の微生物・菌類は、その土壌の性質によって、何が優位に動くかが決まるようなので、ブルーベリーと共生する菌根菌が優位に繁殖できるような土壌環境を整えることが重要そう。
- 菌根菌が優位になった土壌でも、菌根菌だけの作用ではベストな生育とはならず、補助として肥料が必要になると思われる。この肥料についても、菌根菌が優位に動く土壌環境を崩さないようなものを選定することが必要そう。
例えば、菌根菌が材木腐朽菌である場合は、その菌が分解できない動物タンパク質を多く含むものを与えないというような考慮が必要そう。
また、生きている菌(胞子など)を含む肥料についても、その菌がどう作用するのかを再検討することが必要そう。 - 土壌pHについても、本来は、菌根菌が優位に動く環境での結果として「酸性」となっていると思われる。どのような土壌でもpHを酸性にすれば、生育良好になるとの考えはどうも間違いのような気がします。菌根菌をうまく動かすような土壌環境を作り、菌根菌がうまく動いた結果として、土壌pHが弱酸性になっているというのが理想と思われる。
- 菌根の種類から見た場合、ブルーベリーと一般的な作物は異なっている。ブルーベリーはエリコイド菌根であるが、一般的な作物はVA菌根。一般的な作物で良とされることが、ブルーベリーには当てはまらないことが多々ありそうで、考え方を今までの野菜栽培などの延長に置かずに切り替えることが必要そう。
- ブルーベリーの根と共生できる菌根菌は複数あり、環境さえ整えれば自然にも菌根を形成できる。ただ、より積極的な手段として共生菌を添加して、土壌環境をコントロールするという手法も良さそう。
→ 「ブルーベリー共生菌入り木材ペレット SUGOI-ne ブルーベリー用」などをうまく利用する方法の追求が必要。 - 根腐れについては、根腐れを起こす菌(たぶん嫌気性菌)が優位になることが原因。菌根菌が優位になるようコントロールしておくことで根腐れも起こり難くなるのでは?
菌は、他の菌を排除するような動きもする。その点でも菌根菌を増やしておくと、病気を発生させる菌の増殖を押さえる働きも期待できそう。
- 土壌中の微生物・菌類は、その土壌の性質によって、何が優位に動くかが決まるようなので、ブルーベリーと共生する菌根菌が優位に繁殖できるような土壌環境を整えることが重要そう。
- 02/26/07 記
植物と菌との共生関係について、調べを続けています。
その一方で、前項で確認しているブルーベリーの根についていた菌が「材木腐朽菌」のようなので、いろいろなテスト栽培をスタートさせました。結果はどのように出るか判りませんが、とりあえずテスト栽培の状況をご紹介しておきます。
今のところはこのようなテスト栽培をスタートさせています。
ピートモスを全く使わず「針葉樹の樹皮・小枝チップ」単独で植えても元気に育つ(もしろその方が生育良好)ということが判ってきたように、ちょっと無謀とも思えることがもしかしたら良い結果を生むかもしれないので、とりあえず手広くやってみています。
@の用土なんかは、全く土はなく、野積にしていた薪の破片、それも5cm〜10cmぐらいという大きな破片だけで、本当にブルーベリーが育つのか、めちゃくちゃ興味深いところです。
いろいろな文献を読んだところの理屈では、育つ可能性があるように考えられ、今後が楽しみです。
- 05/25/07 記
遅れ馳せながら、2月にご紹介したテスト状況のその後です。
また、途中から並行してテストを進めている共生菌入り資材(仮称:マイコブルー (注))についてもご紹介します。注) マイコブルーは、菌類を意味する"myco"と blueberry の "blue" をくっつけた合成語で、Seven 命名です。
ブルーベリー育成にとても有益と判断しましたので、近日中に販売開始して、皆さんにも使ってみて頂きたいと思っています。まずは、2月にご紹介したテストセットのその後です。
(比較写真のあるものは、左側が2月時点の写真で、右側が5月25日時点の写真です。各番号は、2月のものと同じにしています。)@ →
新鞘の成育が良く、また、徒長がなくガッシリとした感じの成育で、非常に良い感触です。鉢の中がどんな状態になっているかは見ていないので判りませんが、樹皮の大きめな破片だけを鉢に入れたもので、これほどまでに良い成育を示すとは、驚きです。40cmポットに入れた破片は、表面に見えているものが底部分までです。下部は細かな破片を入れているということはありません。
この成育状況を見ると、「材木腐朽菌」「樹皮の大き目なブロック」の辺りをもう少し追求してみる価値がありそうです。
A Chandlerの18cmポット苗を、「針葉樹の樹皮・小枝チップ」のみで40cmポットに植えつけ、そこに「SUGOI-ne ブルーベリー用」に添加されている共生菌のエキスを散布してみたもの、は写真無しです。
エキスの成分を良く確認せずにテスト開始したところ、共生菌繁殖のために尿素が強く添加されており、その影響からか、肥料過多の症状が大きく出てしまいました。
このテストはボツでした。
B →
新鞘の成育は良いものの、徒長傾向が強く見られ、現時点では良好とは言い難いです。
「SUGOI-ne ブルーベリー用」は、もう少し緩やかに効果が出るような使い方が適しているように感じます。まだ試していませんが、分解の遅い針葉樹と、ハードタイプを組み合わせるか、または、有機物をもう少し減らす意味で、ナチュライトなどを併用するなどの工夫が必要そうです。
使い方次第では、絶大な効果が出る可能性を秘めているようにも思えますので、パターンを変えてのテストをしてみようと思っています。
C →
徒長傾向が見られることと、肥料過多の傾向が見られます。
効きの良いソフトタイプ+分解の早い広葉樹の組み合わせは、強すぎるようです。
今回初めて広葉樹をテストしましたが、針葉樹との性質の違いが思った以上に大きなことに驚きました。
広葉樹林がバラエティ豊かな自然を育むのに比較して、針葉樹林は貧しいというのは、このような違いも要因としてあるのかもしれません。
広葉樹を栽培に活用する場合は、針葉樹よりも大きなブロックのものを用いた方が良いかもしれないです。
D →
やや徒長ぎみな傾向が見られることを除き、まずまずの成育を示しています。もう少しだけ栄養供給が抑えられると、徒長のない良い生育になるのではないかと思います。
混合する「SUGOI-ne ブルーベリー用 ソフトタイプ」をもう少し少なくするか、または、ハードタイプを混合した方が結果が良くなる可能性があるのではないかと思えます。
EF →
このテストセットでは、@の結果と同じく広葉樹の薪の屑で植えたものの成育が良好です。葉色が良く、徒長なく成長しています。
その他「SUGOI-ne ブルーベリー用」単用で植えたものについては、当初の芽吹きは良かったものの、それ以降成育停滞に陥っています。成育停滞の原因は、栄養分の供給過多の場合と同じような感じを受けますが、原因がどこにあるのかは不明です。
G →
右上:「SUGOI-ne ブルーベリー用 ソフトタイプ」単用。
右下:「SUGOI-ne ブルーベリー用 ハードタイプ」単用。
左上:「針葉樹の樹皮・小枝チップ」に「SUGOI-ne ブルーベリー用 ソフトタイプ」を1割混合。
左下:「針葉樹の樹皮・小枝チップ」単用。
このテストセットも何故か停滞です。「針葉樹の樹皮・小枝チップ」単用で植えたものも停滞しているため、停滞の原因は共生菌とかとは別のところにあるように思えます。(冬の寒さにあわせず、温度差の大きなサンルーム内に置いたことが原因かもしれません。)
H →
右上:「SUGOI-ne ブルーベリー用 ソフトタイプ」単用。
右下:「広葉樹の樹皮チップ」に「SUGOI-ne ブルーベリー用 ソフトタイプ」を1割混合。
左上:「広葉樹の樹皮チップ」単用。
左下:「広葉樹の樹皮チップ」に「SUGOI-ne ブルーベリー用 ソフトタイプ」を1割混合。
このテストセットも同じく停滞で、テストにはなりませんでした。
ということで、2月にスタートしたテストの結果の総括は、以下のとおりです。- 「SUGOI-ne ブルーベリー用」は、弱めに用いるのがコツとの感触は掴めたものの、どう使ったら最大効果を発揮させれるかは今後の課題
- 材木腐朽菌の繁殖した木材片(特に樹皮の部分)には何らかの可能性がありそう。
またパターンを変えての追求を進めてみたいと思います。
─── ◆ ─── ◆ ─── 次にマイコブルーを添加してみた挿し木発根苗の発育状況についてのご紹介です。
まずは、マイコブルーを添加したものと、添加しなかったものの比較写真です。
品種は、左の写真が Legacy、右の写真が Duplin です。添加した苗と、添加しなかった苗の生育が大きく違い、驚きの結果となりました。
マイコブルーは、直接的な肥料成分はほぼゼロで、ブルーベリーの根との共生が確認されている菌根菌とその他有用微生物などが含まれています。
今回のテストでは、7.5cmポットで発根が確認できた苗に、ティースプーン 1杯程度のマイコブルーを入れています。ピートモス100%の用土に割り箸で2箇所に穴をあけて、そこにマイコブルー(粒・粉状)を埋め込む形で使いました。写真は、埋め込んでから 50日ぐらいの状態です。
現時点では、エリコイド菌根菌が根と共生したことによって、このような差が現われたのか、または、その他の有用微生物の働きでこのような差が現われたのかは確認できていませんが、いずれにしても効果が大きいことが確認できました。
また、テストで7.5cmポットにティースプーン1杯(山盛り)を入れても、肥料過多のような障害が一切見られなかった点もすごく良い点と思えます。
肥料を極小の発根苗に与える場合、量を慎重に検討しなければなりませんが、微生物資材のマイコブルーでは、障害を気にせずラフに与えれるというのがすごく使い勝手が良く、◎だと思います。極小苗の育成にはこのような微生物資材を活用し、有用微生物を共生させ、ある程度大きくなったらそこから有機肥料を与えて行くというのが、もしかしたら究極かもしれないと思い始めました。
極小苗の時点で有用微生物を共生させた苗が、その後どう生育していくのか、微生物との共生のない樹との違いが後々にわたって出るのか、今後追及してみたいと思います。
なお、マイコブルーについては、まだまだ テストを重ねたいと思いますが、挿し木発根苗への添加の効果が絶大でしたので、皆さんにも近日中にご提供開始しようと思っています。
- 03/25/08 記
共生菌に着目し始めて早1年半。生育に影響があることは見えてはいるものの、利用方法については確かなところが見えていません。
共生菌資材を使いながら、何シーズンか経験してみないと利用のポイントを絞るのはなかなか難しそうです。昨年のテスト株のその後の様子は、次のとおりです。
- 材木腐朽菌が繁殖している木(広葉樹の樹皮主体)の破片で植えつけたもの(40cm角ポット/18cmポット)
→ 生育良好。18cmポットのものは、一部植替え。 - 「SUGOI-ne ブルーベリー用 ソフトタイプ」を1割ほど混合した広葉樹の樹皮チップで植えつけてみたもの(40cm角ポット)
→ 概ね生育良好。ただし、用土(広葉樹の樹皮チップ)の目減りが大きい。この目減りを見ても、広葉樹が針葉樹に比較して分解が早いことがハッキリと判ります。 - 「SUGOI-ne ブルーベリー用 ソフトタイプ」を1割ほど混合した「針葉樹の樹皮・小枝チップ」で植えつけてみたもの(40cm角ポット)
→ 生育良好。用土(針葉樹の樹皮・小枝チップ)の目減りは少ないです。 - 「SUGOI-ne ブルーベリー用」(ハード/ソフト)単用 (40cm角ポット / 18cmポット)
→ 生育不良。枯らせてしまったものが多数。枯死の主原因は水切れ(水管理がし難かった)ですが、それ以外にも、肥料過多〜肥料欠乏と思える変化が大きく出て生育が安定しなかったです。細かな木材粉砕物を固めて作っている「SUGOI-ne ブルーベリー用」は、微生物の動き(有機物の分解)が極端になりすぎるように思えました。 - 小苗へのマイコブルー添加
→ 効果絶大。小苗の時点での成育には大きな効果が出ることは確認。その苗のその後の成育(マイコブルーを使っていない苗との生育比較)は、未確認です。 - 大株へのマイコブルー添加(62cmポット/50cm角ポット/40cm角ポット)
→ 効果不明。小苗へのマイコブルー添加で効果が大きかったので、良い結果を期待していましたが、結果としては効果がよく判らなかったです。対照を作っての正確な観察が必要そうです。
これらの結果を踏まえ、次のようなテスト株を新たに設定してみました。
芽吹き以降の生育状況をまた報告したいと思います。
- 材木腐朽菌が繁殖している木(広葉樹の樹皮主体)の破片で植えつけたもの(40cm角ポット/18cmポット)
- 06/04/08 記
前項でセットした以下、4つのテスト株で、興味深い違いが見えましたので報告です。
- @ 「SUGOI-ne ブルーベリー用」テスト株 (写真左下)
- 「マルチ用針葉樹チップ」+「ナチュライトL」(2リットル) の用土。
表面に「SUGOI-ne ブルーベリー用 ハードタイプ」を500グラム乗せ。 - A 「SUGOI-ne ブルーベリー用」テスト対照株 (写真右下)
- 「マルチ用針葉樹チップ」+「ナチュライトL」(2リットル) の用土のみ。
- B 「マイコブルー」テスト株 (写真左上)
- 「針葉樹の樹皮・小枝チップ」+「ナチュライトL」(2リットル) の用土。
表層に「マイコブルー」を100グラム散布。 - C 「マイコブルー」テスト対照株 (写真右上)
- 「針葉樹の樹皮・小枝チップ」+「ナチュライトL」(2リットル) の用土のみ。
違いというのは、葉色と葉脈の色です。
写真は以下のとおりです。@
A
B
C
写真を見て頂くとすぐに判るほど、葉色と葉脈の色に違いが出てきました。
@とBは、それぞれ 「SUGOI-ne ブルーベリー用」と 「マイコブルー」を入れたテスト株。
AとCは、そられを入れていないテスト株。用土と菌の種類に関わらず、菌を入れたもので、葉色が薄く、葉脈が赤っぽくなる傾向が明らかに出ています。
菌が用土中で繁殖する(または、もしかしたら菌が根に共生する)と、肥料の吸収が悪くなるか、または、用土中の窒素を横取りしているように思えますが、真相不明です。肥料を人為的に増やした場合にどうなるのか興味深かったので、コーティング化成(100日溶出タイプ)を小さじ山盛り1杯ずつを全てのテスト株に加えてみました。
またその後を報告したいと思いますが、とりあえずは、菌を添加しての栽培の場合、施肥についてもそれに合わせた工夫が必要そうというのは一つの注意点としてありそうです。
- @ 「SUGOI-ne ブルーベリー用」テスト株 (写真左下)