家庭でのブルーベリーの育て方


一般家庭での数本の地植え栽培、また、鉢植え栽培についてまとめています。

整枝・剪定

剪定の時期

冬の1月〜2月頃と夏に剪定します。
冬の剪定は主に枝の間引き、夏の剪定では主に枝の徒長防止のための芯止めをすると良いです。

花芽と葉芽の見分けと注意

花芽は前年に伸びた枝の先端に着き、葉芽はそれよりも枝の基の方に着きます。
形状は、花芽が円錐状をしているのに対して、葉芽はくさび状をしています。
ブルーベリーの剪定では、この2つの違いに気をつける必要があります。
図ように花芽は前年枝の先端に着いていますので、盆栽のような切り返し剪定をすると、花芽を落としてしまいます。ブルーベリーの剪定は、間引き剪定が基本となります。
なお、花芽が分化するのは前年の9月〜10月頃です。この時期以降で切り返し剪定をすると確実に花芽を落とすことになります。

冬の剪定

株の奥まで日が当たり、風通しを良くするため間引き剪定をします。
この時期(冬1月〜2月)には、花芽が大きく膨らんでおり、剪定で落とすのは勿体ない気がしますが、切りすぎと思うほど間引くことが必要です。
混んだ細い枝では、実が成っても大きい実の収穫は望めず、味もイマイチとなりますので、思いきって間引いて、しっかりした枝に大きい実を成らせた方が良いです。
図はこう切ってますの例です。下垂枝、内向き枝、混んでいる枝は基本的に基から落とすことにしています。もっと切っても良いのかもしれませんが・・・。

新鞘の剪定


(図A)

(図B)

(図C)
健康に育っているブルーベリーは初夏に新鞘(シュート/サッカー)を長く伸ばします。
この新鞘を、夏頃に新鞘の成長が止まった頃剪定します。
冬に剪定しても良いのですが、夏頃に新鞘を剪定すると秋の成長で横枝が伸びることが期待できます。

新鞘を切る位置とその後の枝の展開との関係ですが、凡そ右の図のような関係があります。

図A. − 剪定なしの場合の枝の展開状況です。長く伸びた新鞘の葉の付け根から横に小枝(結果枝)を伸ばします。このような結果枝はあまり太くなく、良い実成りは期待できないように感じています。
また、実が沢山着いてしまうと主軸ごと傾いてしまうことが多いです。
さらに、その後の成長でも頂部優勢(注)がはたらき、下枝の伸びが悪くなり、先端部分の枝がさらに伸びて、全体のバランスが悪くなります。

図B. − 先端部1〜2割ぐらいのところでカットした場合の枝の展開状況です。カットした部分から放射状に枝が伸びる(車枝になる)ケースが多いです。
その下の枝は、頂部優勢(注)がはたらき、伸びが悪くなります。
このカットをすると、樹冠に結果枝がまとまってしまい、実が沢山成ると不安定になってしまいます。また、樹の形としてもあまり見栄えが良くないです。

図C. − 半分またはそれより下部でカットした場合の枝の展開状況です。カットした下部から太い新鞘が伸び出します。基本的な樹形はこのカットで作り、その後伸びた枝に結果枝を着けていくのが良いのではないかと今のところ思っています。

付記 − 図A.のように全く剪定しないと、新鞘の先端部には翌年花が咲き実が着きます。図B. 図C. の剪定をすると翌年の開花/結実は殆ど望めないと思ってください。


大きく・美味しい実を生らせるための剪定

大きく・美味しい実がつく枝は次のような条件を満たしているもののように思います。
@ 太いこと ── 直径3mm以上目安。
A 上向きであること
B 日当たりが良いこと
C 花芽の数が適切であること ── 実が大きく育った後でも枝が下垂しない程度。

剪定では、上の条件を満たす枝以外をできるだけ間引くこと、また、実が大きく育った後に垂れ下がりそうなほど花芽が多くついた枝では、切り戻し剪定をして先端から幾つかの花芽を落とすこと、がポイントになるように思います。

また、その年の収穫だけではなく、翌年に条件を満たす良い結果枝が多く発生するような剪定をすることも重要のように思います。
良い結果枝を多く発生させるためには、具体的には、次のような剪定が必要と思われます。

  • 弱い枝の発生が多くなっている主軸は根元から切り、主軸を更新する ── こうすることで、株の中への日当たりも大きく改善される。
  • 実が大きく育った後に垂れ下がりそうな枝は、間引くか、または、花芽の数を減らす ── 残していると、翌年は全体が下垂枝になり、細い小枝が多く発生することになる。
  • 全体的に強めな剪定として、強い枝の発生を促す

なお、強い剪定と多めな施肥は、強い枝を発生させる一方で、剪定による調整が非常に大変になるという弊害もあるように感じます。
また、品種特性としても、弱い小枝が多く発生し易い品種、花芽が過剰に着き過ぎる品種、などがあります。
「大きく・美味しい実がつく枝」をできるだけ手間をかけずに発生させためには、剪定以外の要因についても十分に考慮する必要があるように感じています。


注:頂部優勢

幼木とか枝の頂部(先端ではなく、あくまで頂部分)の新鞘が最も強く伸び、下方の芽から出た新鞘ほど成長が弱くなることを、「頂部優勢」または「頂芽優勢」というそうです。
この現象は植物ホルモンの面から説明されていて、以下のホルモンが関係しているそうです。

  • サイトカイニン − 成長を促進するホルモン
    おもに根で作られ、水と一緒に幹、枝の導管(芯の部分)を通って上昇し、芽に達して発芽を促す。

  • ジベレリン − 成長を促進するホルモン
    おもに新鞘や根で作られ、水と一緒に幹、枝の導管(芯の部分)を通って上昇し、芽に達して発芽を促す。

  • オーキシン − 成長を抑制するホルモン
    おもに新鞘の先端や葉で作られ、重力によって、樹皮の部分を通って下降し、下部の芽の成長を抑制する。

頂芽が元気良く伸びるのは、サイトカイニンやジベレリンが枝の芯の部分を通って上昇するため、頂芽に最も運ばれ易いためということです。また、その結果として頂芽がいち早く伸び、そこでオーキシンが生成されて下降するため、下方の芽の成長が抑えられ、さらに頂芽の優位性が強まるようです。

また、横枝の上の芽は伸びるが、横枝の下の芽は伸び難いという現象も、オーキシンの濃度が横枝の下側で濃くなるために起きるということです。

この話を頭に入れて、ブルーベリーの剪定を考えると、どこで切るべきかが判り易くなると思います。
上述の新鞘を切る位置と、その後の展開の関係も、このホルモンの話と合致します。